【鍼灸特集②】鎮痛のメカニズム・前編 | 2020/07/01

今回は鍼灸が「なぜ痛みに効くのか」について解説します。

このシリーズは、より多くの皆様の鍼灸への理解と選択に資するべく、現代科学で解明されている鍼灸について、ザッと解説するものです。

なるべく最新の情報に基づいてまとめておりますが、できる限り分かりやすくするため簡潔に表現している部分があり、あくまでも参考程度にお読みください。

凄すぎる!体内の鎮痛システム!

前回も述べたように痛みとはとても不快な感覚であり、長引くと良くありません。

なので、痛み情報が脳に伝わると、もう痛み情報を送ってこなくていいよ!と、脳が返答する機能が備わっています。

これを「内因性疼痛抑制系」と呼びます。

鍼灸刺激は、この内因性疼痛抑制系を意図的に起動させ、痛み信号をブロックしていると考えられています。

用語の解説
  • 疼痛(とうつう) … 痛みのこと。
  • 鎮痛(ちんつう) … 痛み止めのこと。
  • 内因性(ないいんせい) … 生体・組織・細胞などの中から発生すること。
  • 賦活(ふかつ) … 活性化させること。

ゲートコントロール理論

無意識のうちに痛いところを擦っていた経験はありませんか?

擦っていると痛みが引いてくるのは、この「ゲートコントロール理論」によって理解されています。

ケガなどの情報(痛み)などは、神経のAδ線維やC線維によって局所から脊髄や脳に伝達されます。

擦った感覚(触圧覚)は神経のAβ線維が伝えるのですが、Aδ線維やC線維よりも優位に情報が伝達されるため、痛みを感じにくいというわけです。

ただし、このシステムは即効性はありますが、持続性はありません。

病院や整骨院で、電気刺激などを受けることがあると思いますが、あれは「経皮的神経電気刺激法(TENS)」と呼ばれ、この理論に基づいたものです。

詳しくは後日、「物理療法特集」で解説したいと思います。

鍼灸刺激による賦活

痛みが伝わっている脊髄レベルと同じ皮膚や筋肉などに鍼灸刺激をすることでゲートコントロール理論が働くと考えられています。

鍼灸施術の特徴の一つとして、痛みのある部位だけでなく、反対側の部位や遠く離れた手や足のツボに刺激することがありますが、これはゲートコントロール理論を起動するために、同じ脊髄レベルのエリアに刺激しているためです。

侵害刺激誘発性鎮痛(NSIA)

これは「痛み」を「痛み」で抑えるシステムで、全身に痛み刺激を加えることで本来の痛み情報を抑制できます。

以前は広汎性侵害受容性調節(DNIC)と呼ばれていました。

あまり詳しくは分かっていませんが、複数?より強い刺激?でAδ線維やC線維(ポリモーダル受容器)が興奮することで脳内の鎮痛システムが作動すると考えられています。

このシステムも即効性はありますが、持続性がありません。

鍼灸刺激による賦活

鍼の経験がある人は分かると思いますが、鍼を体内に刺入していくと「響き(得気)」という鍼特有のズーンとした重だるいような感覚が走ることがあります。

この響きはAδ線維やC線維(ポリモーダル受容器)が興奮して起こると考えられていることから、響きを伴った鍼灸刺激による鎮痛は侵害刺激誘発性鎮痛に近い機序で起こっていると理解されています。

この響きは浅い鍼よりも深い鍼の方が有効です。

下行性疼痛抑制系

下行性疼痛抑制系は、内因性疼痛抑制系の中でも中心的役割を担っていると考えられています。

脳まで達した刺激が、中脳を興奮させ、橋を介して脊髄でノルアドレナリンを、延髄を介して脊髄でセロトニンを放出させます。

ノルアドレナリンやセロトニンは神経伝達物質を呼ばれ、さまざまな働きをしています。

その一つとして、ノルアドレナリンやセロトニンが脊髄から脳への伝達をブロックするため鎮痛効果が出現します。

また、内因性オピオイドというものがあり、体内で作られる最も強力な鎮痛物質で、脳内麻薬や脳内モルヒネと呼ばれることもあります。

この内因性オピオイドが脳の視床下部や中脳、延髄などを刺激することで、セロトニンやノルアドレナリンを放出させ、下行性疼痛抑制系をより強力に作動させていると考えられています。

鍼灸刺激による賦活

鍼灸刺激によってノルアドレナリンとセロトニンを区別して放出させる方法は見つかっていませんが、どちらも抗重力筋と関連が深いことから、抗重力筋への刺激が効果を高める可能性があります。

また、鍼通電や響きを伴うような強めの刺激でAδ線維やC線維を刺激してやることで内因性オピオイドが出現します。

脳の感覚野はお腹や背中よりも手や足の方がエリアが広いため、手や足に鍼灸刺激を加えることで、脳の広いエリアに刺激が加わり下行性疼痛抑制系を活性化させやすいと考えられています。


長くなってしまったため、続きは次回!(^^;)

【参考文献】

  1. 橋口さおり(2017年)運動・からだ図解 痛み・鎮痛のしくみ、マイナビ出版
  2. 小山なつ(2016年)増補改訂新版 痛みと鎮痛の基礎知識、技術評論社
  3. 伊藤和憲(2017年)いちばんやさしい 痛みの治療がわかる本、医道の日本社
  4. 東洋療法学校協会(2002年)はりきゅう理論、医道の日本社
  5. 尾崎昭弘(2003年)図解 鍼灸臨床手技マニュアル、医歯薬出版

投稿日:2020年7月1日 投稿者:西尾

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