【アスリートの皆様へ】試合前後のコンディショニング・後編

2020年07月22日

【豪雨被害に遭われた皆様へ】

この度の豪雨により被害に遭われた皆様ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
皆様の安全と被災地の一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。
私どもで何かお役に立てることがありましたら、遠慮なくお申し付けください。

マスト整骨院・鍼灸院 スタッフ一同


試合後のコンディショニング

クーリングダウン(クールダウンともいう)

目的

  1. 疲労回復(リカバリー)
  2. 外傷・障害の予防

効果

①疲労回復への切り替え

運動によって筋肉の中に疲労物質が貯まります。この疲労物質をどれだけ早く処理できるかで、次のトレーニングや試合のパフォーマンスに影響が出ます。
素早く処理するためには、安静より積極的に軽い運動を行った方が良いことが分かっています。
また、激しい運動後に急に停止すると、体内を激しく流れていた血液が心臓に戻りにくくなり、脳への血流が不足して、めまい、吐き気、失神、過換気状態などが起こることがあるため、体に負荷がかからない程度の軽い運動で筋肉を収縮させて、血液を循環させることでめまいなどを防止することができます。
加えて、運動中は交感神経系が激しく興奮しており、エネルギー消費が増大しています。
これを止めるためには、交感神経系の興奮を抑える必要があり、体温を通常状態に戻すことで、無駄なエネルギー消費を抑えることができ、体力の消耗を防げます。

②筋肉の柔軟性、関節可動域の回復

運動後は筋肉が前後左右でアンバランスな状態になっています。
筋肉を激しく使ったことで、筋肉は硬くなり、関節可動域は狭まります。
ストレッチングなどで筋肉の柔軟性を運動前の状態に戻すことで、疲労回復や外傷・障害の予防につながり、さらに運動直後の体温が高い状態で行うことで柔軟性が向上する効果もあります。

方法

  1. 楽と感じる程度のジョギング(最低でも5分)
  2. スタティックストレッチ

疲労回復方法

筋肉に負荷をかければ、必ず小さな傷ができます。
その傷が完全に回復しないうちに次の負荷をかけると、傷が積み重なって大きな外傷・障害へと発展していきます。
すると、ケガをした選手は練習ができなくなっていき、競技能力の向上が遅れ、チームとしても戦力ダウンになるため、被害を最小限にするためにもリカバリーこそ全力で取り組むべきです。
リカバリーの基本は、十分な睡眠とバランスの取れた食事です。

睡眠

睡眠不足は、疲労感をもたらし、情緒を不安定にし、適切な判断力を鈍らせます。
オリンピック選手の平均睡眠時間は8時間半というデータもあります。
しかし、ただ長く寝れば良いという訳ではなく、睡眠の質を高めることが重要です。
睡眠によって、成長ホルモンの分泌が促進され、筋肉は修復し、身長は伸び、体の成長へとつながっていきます。

食事

食事は、トレーニングで失われた栄養素(エネルギーやビタミン、ミネラルなど)を取り戻し、疲労の回復を促し、トレーニング効果を高めてくれます。

食事は必要なエネルギー量と各栄養素を過不足なく含んで「バランスよく食べましょう」。
「おいしく楽しくリラックスして」食べることにより、心身の疲労回復にもつながります。
栄養補助食品(サプリメントなど)は食事ではとりにくい栄養素を簡単に摂取できますが、特定の栄養素に偏りやすく健康問題へと発展する場合や、アンチ・ドーピングの観点からも、18歳以下の選手は医学的に必要な場合を除いて使用すべきではありません。
栄養補給の基本的な形はあくまでも「料理」です。
また、欠食はやめましょう。

その他

アイシング

捻挫や打撲で行うRICE処置とリカバリーで行うアイシングは目的が異なります。
リカバリーを目的とする場合、筋肉や神経を冷やすことにより、
①余分なエネルギー代謝や代謝産物、過剰な炎症を抑制できること、
②血管が収縮・拡張による疲労物質の除去を促進すること
を狙ってアイシングを行います。
体温が高い状態だと、炎症状態を助長するだけでなく、全身の疲労感や倦怠感を高め、精神的ストレスとなってしまいます。
体温が高く全身の疲労が問題の場合は全身を冷却する必要があります。

アイスバス(冷水浴や交代浴など)

短期決戦では少ないリカバリー期間でハイパフォーマンスを発揮することが要求されます。
この場合は試合直後に全身を冷やした方が良いとされており、氷と冷水を入れたバケツ(水温10~15℃)に15分程度体を浸す方法で、脚全体や全身を短時間で効率よく冷却できます。
自宅などの風呂場で行う場合は、40℃前後にお湯に10分浸かった後、水のシャワーを数分間あてることを繰り返すことで、血行を促進させ回復が早めることができます。

アイスパック

氷のうやビニール袋に氷を入れて、局所を冷却する方法です。
この時、なるべく空気を抜くことで皮膚と氷との接触面積が大きくなり、冷却効率が上がります。
また、アイシング直後にストレッチングを行う方法もあり、柔軟性向上に効果的です。
付け加えて、保冷剤は温度が低くなり過ぎてしまうため、アイシングには適しません。

ストレッチング

ストレッチングによる筋肉の伸張により、筋肉の柔軟性や疲労が改善し、筋力のアンバランスを整えるのに効果的です。
ただし、痛みを伴う程の炎症や疲労がある場合は、無理に行なってはいけません。

スタティックストレッチング

反動や弾みを付けずに筋肉をゆっくり伸ばして、伸ばした状態を維持する静的なストレッチング方法でリカバリーに適しています。
30秒程度はその姿勢を維持することが望ましいとされています。

スポーツマッサージ

スポーツマッサージはパッシブリカバリー(消極的回復)と呼ばれ、ストレッチングなどの補助的な位置付けです。他のリカバリー法をせずに、スポーツマッサージだけ受けても効果はありません。
スポーツマッサージは筋血流量を増加させ、筋疲労の回復を促進させる目的で行います。
試合前に精神的緊張を取り除くことを目的に最終調整として行う場合もありますが、筋肉を緩め過ぎてパフォーマンスが低下してしまう可能性があるため、理解のある施術者を選択する必要があります。

スポーツ鍼灸

スポーツ鍼灸も同じく、パッシブリカバリーな方法です。
鍼灸がマッサージと異なるところは、外傷・障害の治療・回復に即効性があり、治療的要素が大きいということです。痛みがある場合は一つの選択肢として検討すべきです。

最後に、最高の状態で試合に臨むために

100%以上の力を出すためには痛みのない状態で試合に臨むことです。
少しでも痛みがあれば満足な活躍はできないと思います。
なので、必ず痛みは取り除いておきましょう。
また、ストレングス&コンディショニング業界では、昔は『超回復理論』が一般的でしたが、近年では『フィットネス-疲労理論』が広がっており、トレーニングを積んで能力を向上させるだけでなく、疲労を抜くことによって、さらにパフォーマンスを引き上げることが重要であるとされています。

『フィットネス-疲労理論』の概要図

以上の知見を活用して、自身の、またはチームの状況、環境を考慮して、やるべきことを考えながら行動してください。


【参考文献】

  1. 日本スポーツ協会(2007年)公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト⑥予防とコンディショニング
  2. 河森直紀(2018年)ピーキングのためのテーパリング、ナップ
  3. 下村吉治(2010年) スポーツと健康の栄養学  第3版、ナップ

投稿日:2020年7月22日 修正加筆:2020年7月27日 投稿者:西尾

【アスリートの皆様へ】試合前後のコンディショニング・前編

2020年07月1日

今年は高校総体が中止となり、ほとんどの競技で代替大会が7月から8月にかけて開催されると思います。

およそ3ヶ月間練習できていなかったため、コンディション調整が上手くいっていないアスリートも多いと思います。

そこで今回は、試合(練習)前後に行うべきコンディショニングについて、簡単ながらまとめたので参考にしてください。

アスリートの皆さんがベストパフォーマンスを発揮でき、悔いなく、1つの区切りを迎えられるよう祈っております。

試合前

ウォーミングアップ

目的
  1. パフォーマンスの向上
  2. 外傷・障害の予防
効果
体温(筋温)上昇

筋肉の温度を上げることで、筋肉の収縮がスムーズになり、筋肉のコリ(硬さ)が改善します。

また、十分に筋温を上げてからストレッチを行うことにより、筋肉や関節の柔軟性が向上し、関節可動域が広がります。

筋温を十分に上げるには15分間はウォーミングアップを行うべきです。

逆に筋肉の温度が十分に温まっていない状態でプレイすると、パフォーマンスを発揮できないだけでなく、筋肉や関節、靭帯などに余分な負荷をかけ、外傷や障害につながります。

組織の作業効率向上

筋肉を動かすためには酸素が必要です。

十分な酸素を筋肉に取り込むためには、徐々に運動強度を上げることで、呼吸循環機能の適応を円滑にし、酸素の摂取効率が向上します。

さらに、体温が1℃上昇すると、細胞の代謝率は13%増加すると言われており、無駄なエネルギー消費が低減し、作業効率が向上します。

ただし、急激な脈拍の上昇を伴う高強度なウォーミングアップは、疲労状態につながるため、避けるべきです。

また、ウォーミングアップによって神経系の反応が向上します。

神経系の反応が良いと、身のこなしが良くなり、無駄な接触プレイを避けられ、外傷や障害の予防につながります。

方法
  1. 少し速いと感じる程度のジョギング
  2. ダイナミックストレッチ
  3. 競技特性に応じた仕上げ

食事

筋肉を動かす主なエネルギー源は糖質(炭水化物)です。

糖質は筋肉に蓄えられて運動で消費していきます。

なので、試合前までにトレーニングによって消耗した糖質を筋肉に蓄えることが必要です。

3~7日前は普段どおりの食事を行い、3日前~前日は普段の食事に加えて高糖質な食事を行うことで、効率よく筋肉に糖質を蓄えられます。

【💡豆知識】体内の水分が2%失われると運動パフォーマンスが低下する

人間は何もしなくても1日2L近い水分を失います。

「のどが渇いた」と感じたときには、体内の2%の水分が失われた状態です。

人間の体の中で水分が吸収されるのは「小腸」であり、水を飲んでから20~30分間は胃に停滞します。

「のどが乾いた」と感じてから水分を補給しても、体内に吸収されるのは20分後であり、手遅れになってしまいます。

なので、脱水予防のためにも、15分毎に200ml前後の水分補給を心がけましょう。

また、水分の吸収を早めるためには、水に微量の塩分と糖分を含んでいることが望ましいとされ、筋肉がつるのも防いでくれます。

加えて、2%以降の脱水は1%ごとに体温を0.3℃上昇させます

なるべく低温の状態(5~10℃)で飲水することによって、深部体温の上昇を抑えられ、運動継続時間を延長させ、熱中症予防にもつながります。

もう一つ、熱中症は気温が高いことが原因と思うかもしれませんが、注意すべきは「湿度」です。

人間は汗をかいて、汗を蒸発させることで体温を下げます。

しかし、湿度が高いとうまく蒸発させることができず、熱が体内にこもってしまい、熱中症になります。

なので、運動後は素早く乾いた服に着替えて体温を落とし、リカバリーに努めるべきです。

詳細は、クーリングダウンの項目に譲ります。


長くなってしまったため、後半に続きます!(^^;)

【参考文献】

  1. 日本スポーツ協会(2007年)公認アスレティックトレーナー専門科目テキスト⑥予防とコンディショニング
  2. 下村吉治(2010年)スポーツと健康の栄養学(第3版)、ナップ
  3. 河森直紀(2018年)ピーキングのためのテーパリング -狙った試合で最高のパフォーマンスを発揮するために-、ナップ

投稿日:2020年7月1日 投稿者:西尾

【鍼灸特集②】鎮痛のメカニズム・前編

2020年07月1日

今回は鍼灸が「なぜ痛みに効くのか」について解説します。

このシリーズは、より多くの皆様の鍼灸への理解と選択に資するべく、現代科学で解明されている鍼灸について、ザッと解説するものです。

なるべく最新の情報に基づいてまとめておりますが、できる限り分かりやすくするため簡潔に表現している部分があり、あくまでも参考程度にお読みください。

凄すぎる!体内の鎮痛システム!

前回も述べたように痛みとはとても不快な感覚であり、長引くと良くありません。

なので、痛み情報が脳に伝わると、もう痛み情報を送ってこなくていいよ!と、脳が返答する機能が備わっています。

これを「内因性疼痛抑制系」と呼びます。

鍼灸刺激は、この内因性疼痛抑制系を意図的に起動させ、痛み信号をブロックしていると考えられています。

用語の解説
  • 疼痛(とうつう) … 痛みのこと。
  • 鎮痛(ちんつう) … 痛み止めのこと。
  • 内因性(ないいんせい) … 生体・組織・細胞などの中から発生すること。
  • 賦活(ふかつ) … 活性化させること。

ゲートコントロール理論

無意識のうちに痛いところを擦っていた経験はありませんか?

擦っていると痛みが引いてくるのは、この「ゲートコントロール理論」によって理解されています。

ケガなどの情報(痛み)などは、神経のAδ線維やC線維によって局所から脊髄や脳に伝達されます。

擦った感覚(触圧覚)は神経のAβ線維が伝えるのですが、Aδ線維やC線維よりも優位に情報が伝達されるため、痛みを感じにくいというわけです。

ただし、このシステムは即効性はありますが、持続性はありません。

病院や整骨院で、電気刺激などを受けることがあると思いますが、あれは「経皮的神経電気刺激法(TENS)」と呼ばれ、この理論に基づいたものです。

詳しくは後日、「物理療法特集」で解説したいと思います。

鍼灸刺激による賦活

痛みが伝わっている脊髄レベルと同じ皮膚や筋肉などに鍼灸刺激をすることでゲートコントロール理論が働くと考えられています。

鍼灸施術の特徴の一つとして、痛みのある部位だけでなく、反対側の部位や遠く離れた手や足のツボに刺激することがありますが、これはゲートコントロール理論を起動するために、同じ脊髄レベルのエリアに刺激しているためです。

侵害刺激誘発性鎮痛(NSIA)

これは「痛み」を「痛み」で抑えるシステムで、全身に痛み刺激を加えることで本来の痛み情報を抑制できます。

以前は広汎性侵害受容性調節(DNIC)と呼ばれていました。

あまり詳しくは分かっていませんが、複数?より強い刺激?でAδ線維やC線維(ポリモーダル受容器)が興奮することで脳内の鎮痛システムが作動すると考えられています。

このシステムも即効性はありますが、持続性がありません。

鍼灸刺激による賦活

鍼の経験がある人は分かると思いますが、鍼を体内に刺入していくと「響き(得気)」という鍼特有のズーンとした重だるいような感覚が走ることがあります。

この響きはAδ線維やC線維(ポリモーダル受容器)が興奮して起こると考えられていることから、響きを伴った鍼灸刺激による鎮痛は侵害刺激誘発性鎮痛に近い機序で起こっていると理解されています。

この響きは浅い鍼よりも深い鍼の方が有効です。

下行性疼痛抑制系

下行性疼痛抑制系は、内因性疼痛抑制系の中でも中心的役割を担っていると考えられています。

脳まで達した刺激が、中脳を興奮させ、橋を介して脊髄でノルアドレナリンを、延髄を介して脊髄でセロトニンを放出させます。

ノルアドレナリンやセロトニンは神経伝達物質を呼ばれ、さまざまな働きをしています。

その一つとして、ノルアドレナリンやセロトニンが脊髄から脳への伝達をブロックするため鎮痛効果が出現します。

また、内因性オピオイドというものがあり、体内で作られる最も強力な鎮痛物質で、脳内麻薬や脳内モルヒネと呼ばれることもあります。

この内因性オピオイドが脳の視床下部や中脳、延髄などを刺激することで、セロトニンやノルアドレナリンを放出させ、下行性疼痛抑制系をより強力に作動させていると考えられています。

鍼灸刺激による賦活

鍼灸刺激によってノルアドレナリンとセロトニンを区別して放出させる方法は見つかっていませんが、どちらも抗重力筋と関連が深いことから、抗重力筋への刺激が効果を高める可能性があります。

また、鍼通電や響きを伴うような強めの刺激でAδ線維やC線維を刺激してやることで内因性オピオイドが出現します。

脳の感覚野はお腹や背中よりも手や足の方がエリアが広いため、手や足に鍼灸刺激を加えることで、脳の広いエリアに刺激が加わり下行性疼痛抑制系を活性化させやすいと考えられています。


長くなってしまったため、続きは次回!(^^;)

【参考文献】

  1. 橋口さおり(2017年)運動・からだ図解 痛み・鎮痛のしくみ、マイナビ出版
  2. 小山なつ(2016年)増補改訂新版 痛みと鎮痛の基礎知識、技術評論社
  3. 伊藤和憲(2017年)いちばんやさしい 痛みの治療がわかる本、医道の日本社
  4. 東洋療法学校協会(2002年)はりきゅう理論、医道の日本社
  5. 尾崎昭弘(2003年)図解 鍼灸臨床手技マニュアル、医歯薬出版

投稿日:2020年7月1日 投稿者:西尾

【鍼灸特集①】痛みって何?

2020年06月30日

 

訪問鍼灸を開始して、約半年が経過しました。

予想以上のご関心を寄せていただき、誠にありがとうございます。

より多くの皆様の鍼灸への理解と選択に資するべく、現代科学で解明されている鍼灸について、前もってザッと解説しておこうと思います。

なるべく最新の情報に基づいてまとめておりますが、できる限り分かりやすくするため簡潔に表現している部分があり、あくまでも参考程度にお読みください。

 

そもそも痛みって何?

国際疼痛学会では痛みを「実際の組織損傷や潜在的な組織損傷に伴う、あるいはそのような損傷の際の言葉として表現される、不快な感覚かつ感情体験」と定義している(訳:日本ペインクリニック学会)。

つまり、痛みとは主観的な感覚・感情であり、患者さん本人が「痛い」といえば「痛み」があると考えます。

 

感情体験の部分は、よく「情動」とも訳されます。

痛みはとても不快な感覚で、「怒り」や「イライラ」、「悲しみ」、「不安」、「恐怖」などの感情が湧いてきて、「呼吸が荒くなる」、「血圧が上がる」、「動悸がする」、「冷や汗をかく」などの身体的な変化が起こります。

 

痛みは体の異常を知らせる警告信号であり、無視してはいけません。

(「痛み」の他に、「発熱」と「疲労」と合わせて、体の異常を知らせる「三大アラーム」と呼ばれたりします。)

最近では、痛みを単なる体の症状ではなく、全人的苦痛(トータルペイン)として捉え、「身体的苦痛」「社会的苦痛」「精神的苦痛」「スピリチュアルペイン」という4つの側面が関連して起こると考えます。

 

痛みの種類

※本節の詳しい解説は他の専門書等に譲ります。

 

痛みの原因による分類

  • 侵害受容性疼痛 … 痛みを感じるセンサーが反応した痛み。
  • 神経障害性疼痛 … 神経そのものが傷付いた痛み。
  • 心因性疼痛 … 異常はないが、心の問題で起こる痛み。

 

痛みの部位による分類

  • 体性痛 … 皮膚、筋肉、骨、関節などの痛み。痛む場所が明確で、鋭い痛み。
  • 内臓痛 … 内臓からくる痛み。痛む場所が不明確で、鈍い痛み。
  • 関連痛 … 痛みが発生している場所とは別の場所に感じる痛み。
  • 中枢性疼痛 … 脳や脊髄が傷付くと痛み刺激がないのに痛いと感じることがある。

 

痛みの起こり方による分類

  • 急性痛 … ケガや急な病気で起こる痛み。
  • 慢性痛 … 痛みが長く続いている状態のこと。
  • 自発(安静時)痛 … じっとしていても感じる痛み。
  • 誘発(体動時)痛 … 安静にしていれば痛くないが、刺激が加わると痛む。

 

痛みの悪循環

痛みが激しかったり治療がうまく行かない時などに、痛みが悪化したり慢性化することがあります。

痛みを感じると交感神経と運動神経が興奮して、血管と筋肉が収縮します。

すると血行が悪くなり、その周囲の酸素や栄養が不足してきます。

その状態が続くと、痛みを感じさせる物質が産まれ、その場に停滞し「痛みの悪循環」を形成します。

この痛みの悪循環が長引けば長引くほど神経が過敏になり、ちょっとした刺激でも痛く感じてしまい、さらにストレスとなって不安などから痛み以外の症状を作り出してしまいます。

なので、痛みを感じたらできるだけ早く原因を取り除く必要があります。

 

日本人は何でも我慢しがちです。

「このぐらいの痛みはほっとけば、すぐに治るだろう」だとか、「我慢は美徳」だとか、痛みを治りにくくしています。

鍼灸師や柔道整復師だけでなく、医師や看護師、理学療法士などに早く相談してください。

当院では公式LINEを用いて、ご質問・ご相談にお答えしております。

ぜひ、ご活用ください。(トップページにリンクあり)


鍼灸のメカニズムを解説しようと思い書き始めたのですが、予想以上に鍼灸以前の基礎知識の部分が長くなってしまったため、続きは次回!(^^;)

【参考文献】

  1. 橋口さおり(2017年)運動・からだ図解 痛み・鎮痛のしくみ、マイナビ出版
  2. 小山なつ(2016年)増補改訂新版 痛みと鎮痛の基礎知識、技術評論社
  3. 伊藤和憲(2017年)いちばんやさしい 痛みの治療がわかる本、医道の日本社

投稿日:2020年6月30日 投稿者:西尾

【指導者・保護者の皆様へ】児童生徒のケガが急増中!!!【警鐘】

2020年06月29日

久しぶりに腰痛に悩まされている鍼灸師の西尾です。

上野先生に鍼をしてもらって、とても楽になりました。

患者さんに憧れて、腹筋ローラーをやってみたのですが、普段運動しないのに突然高強度のものをするもんじゃありませんね…。

[立ちコロする患者さん。さすが柔道部。さすが末廣先生の弟。]

 

さて今回は、最近、児童生徒のケガが急増している件についてです!!!

 

児童生徒は91日間、運動していなかった!

日を追って確認してみましょう。

 

2月21日

熊本県内で初めてCOVID-19感染確認。

 

2月28日

〈熊本県教育委員会〉

3月2日から3月15日まで臨時休校決定。

臨時休校中の部活動は全ての活動を休止(練習試合、対外試合、演奏会、校外活動等を含む)。

 

3月11日

〈熊本県教育委員会〉

春季休業開始日まで臨時休校延長決定。

 

4月16日

〈政府〉

5月6日まで熊本県に緊急事態宣言発出。

(5月4日、5月31日まで延長決定。)

 

5月14日

〈政府〉

熊本県の緊急事態宣言解除。

〈熊本県教育委員会〉

①5月18日から31日までの間、登校日を設定し、分散登校等により授業を再開

②6月1日から通常登校により教育活動開始

③部活動は5月31日まで校内外全ての活動休止

と発表。(熊本市は5月25日から臨時登校、6月8日から通常授業。)

 

つまり、3月2日から6月1日までの少なくとも91日間(13週間)部活動は完全に休止状態だったことになります。

 

ケガをする児童生徒が急増中!

しっかり統計を取ったわけでなく、あくまで私の主観的なものですが、今月はケガをした児童生徒が多かった印象です。

 

以前、「今、少しでも運動してほしい科学的理由」でも紹介しましたが、

・2週間運動しないと筋力が23%低下する。

・3倍の時間をかけても筋力は元に戻らなかった。

という研究報告があります。

 

13週間も運動しなかったら、一体どのくらいまで筋力が落ちるのか。

私が調べた限りでは具体的な数値は見つかりませんでしたが、児童生徒の体力は過去に例を見ないほど低下していることは明白です。

 

5月下旬頃から当院には、

  • 部活動開始1日目から4時間も練習した生徒
  • 部活動開始2日目からガッツリ(休校直前の運動強度で)練習した生徒
  • 体育の体力測定でシャトルランを行った児童

などなど、多くの児童生徒がケガで駆け込んできています。

まだ高強度の運動をするには早すぎるのではないかと危惧しています。

肉離れや捻挫など、どれも筋力低下が原因と思われるものばかりです。

 

そんな中、熊本県高校体育連盟は高校総体の代替大会を7月から8月上旬にかけて行うと発表しました。

(参考:熊本県高等学校体育連盟

最終学年の生徒のため、1つの区切りとして開催されるようですが、ケガをして出場できなければ元も子もありません。

 

行政は予想していた?

文部科学省の通知をみると、部活動の再開に当たっては「一斉臨時休業及び春季休業期間において、運動不足となっている生徒もいると考えられるため、十分な準備運動を行うとともに、身体に過度な負担のかかる運動を避けるなど、生徒の怪我防止には十分に留意すること」(引用:「新型コロナウイルス感染症に対応した小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開等に関するQ&Aの送付について」文部科学省)となっています。

また、保健体育の授業においても「臨時休業の長期化により体力の低下が懸念されることを踏まえ、児童生徒の身体状況を把握しながら段階的に活動を行うこと」(引用:「学校における教育活動の再開について」熊本県教育委員会)と配慮するよう要請されています。

 

部活においても、段階的に再開されるべきだったと思います。

 

日本は指導者の質が問われている

日本の体育会系部活動は、海外と比べたら特殊です。

 

日本ではスポーツを「体育」として行い、明治維新以降、富国強兵のため学校教育の中に組み込まれました。

一昔前まで「ケガぐらいで弱音を吐くな」「水は飲むな」などの根性論が強いられ、勝利至上主義のもと、洗脳的指導が普通であり、今でも時折、野球や相撲などの様々な競技で「常識を逸した指導」が問題となっています

今では質より量の練習は「効果はなく、害である」という研究結果が世界の常識となっています。

もし、アメリカで指導者が長時間練習をさせたり、ケガをさせてしまったら、虐待で捕まりますよ。

 

近年、児童生徒の体力低下や高齢者のフレイルなどから、文部科学省は心身の健康維持・増進のため「だれもが、いつでも、どこでも、いつまでもスポーツに親しむことができる生涯スポーツ」を行えるよう取り組んでおり、そのためには「スポーツ競技」=「部活で辛いもの」という認識をなくすことが生涯スポーツの発展に繋がると言われています。

 

脱線したのでまとめると、小学校・中学校・高校のうちに「スポーツの楽しさ」をもっと教えてほしいということです。

保護者の皆様方には、我が子のスポーツ外傷・障害を防ぐためにも、スポーツ指導者が公的資格を保有しているかどうか確認してみてほしいと思います。

詳しくは他サイトに譲りますが、数多くの記事があるので検索してみてください。

 

今回の部活動再開で危惧していること

大きく2つあります。

 

まず、急な激しいプレーはケガのリスクを高めます。

特に中学1年生と高校1年生の新入生は例年の新入生よりもブランクが長ったため、ケガの発生リスクが高いと考えられ、注意が必要です。

 

また、熱中症は梅雨が明けた頃が一番危険です。

熱中症の発生時の環境条件は、気温が高いことよりも、湿度が高いことの方が発生リスクを高めます。

雨が降ったあとの晴れた日が本当に危険です。

例年なら春から夏にかけて日々活動しており、暑熱順化が行われるため気温の変化に身体が対応してくれます。

しかし、今年は6月から急に運動を始めているため、十分に順化できていない可能性が高いです。

なので、代替大会の7月開催は本当に心配です。

(参考:「熱中症を防ぐためには」環境省

 

スポーツ再開時の運動強度について

最後に、スポーツ活動再開時の運動強度に関する報告がありましたので紹介します。

(引用:「安全に配慮したスポーツ活動の再開にむけて」公益財団法人日本スポーツ協会

 

アントラーズスポーツクリニックさんでも紹介がありましたので、掲載しておきます。ご参照ください。

運動負荷を戻すまで

前回は、GPSを使用した研究を踏まえて、スポーツ活動再開後の急激な運動負荷の増大は怪我に繋がるとお伝えしました。しかし、GPSを使用して評価することが可能なチームは多くないと思います。今回は、中断前の運動負荷に戻すまでの期間がどのくらい必要になるのかをお伝えします。下記の式に休止期間とその時のトレーニング量を入力することで、元の負荷に戻すまでに何週間要するかがわかります。その期間をかけて徐々に負荷をあげ、怪我の予防に努めましょう。0.5533×休止期間の長さ(週)ー0.0587×休止期間中の練習・トレーニング量(休止前の練習・トレーニング量を100とした時の%)参考文献:Purdam et al.Prescription of training load in relation to loading and unloading phases of training,2015#ASC #アントラーズスポーツクリニック #緊急事態宣言解除 #怪我予防 #GPS #ACWR

アントラーズスポーツクリニック – ASCさんの投稿 2020年5月18日月曜日

(引用:「スポーツ再開後の運動負荷を戻すまで」アントラーズスポーツクリニック

千葉大学附属病院スポーツメディクスセンターでも紹介がありましたので、掲載しておきます。ご参照ください。

(引用:「新型コロナウイルスから体育・スポーツを安全に再開するためのガイドライン」千葉大附属病院のスポーツメディクスセンター

 

急な運動はケガの元です。

運動会などでお父さんたちがケガをするのと同じです。

くれぐれもご注意ください。


投稿日:2020年6月29日 最終更新日:2020年7月1日(一部追記・変更しました。) 投稿者:西尾

今、少しでも運動してほしい科学的理由

2020年04月30日

《もくじ》

1. 2週間運動をしないと筋力が23%も低下する

2. 元に戻すのに3倍の時間をかけても難しい

3. 運動不足による悪影響

4. 日常生活において運動量を増やすアイディア

5. プラスαの工夫で運動量UP

 

2週間運動をしないと、筋力が23%も低下する

デンマークのコペンハーゲン大学健康加齢センターのアンドレアス・ヴィジョルソ博士の研究によると、23歳前後の男性17名と68歳前後の男性15名を対象に脚を2週間固定し運動できない状態を作り、固定前後の筋力と筋肉量を比較したところ、筋力が若年者は平均28%低下し、高齢者は平均23%低下することが分かりました。

元に戻すのに3倍の時間をかけても難しい

筋力を低下させた後に週に3~4回の自転車トレーニングを6週間続けてもらったところ、若年者も高齢者も元の筋肉量には戻りませんでした。

つまり、運動不足によって落ちてしまった筋肉を取り戻すのに3倍以上の時間が必要ということが分かりました。

(参考文献:Andreas VigelsøMartin GramCaroline WiuffJesper L AndersenJørn W HelgeFlemming Dela (2015) ”Six Weeks’ Aerobic Retraining After Two Weeks’ Immobilization Restores Leg Lean Mass and Aerobic Capacity but Does Not Fully Rehabilitate Leg Strength in Young and Older Men” J Rehabil Med, 47: 552–560. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25898161)

 

運動不足による悪影響

今般の感染症で不要不急の外出自粛により、運動不足が懸念されています。

どんな人でも加齢による筋肉量の低下が起きています。

それを「サルコペニア」と呼び、筋肉量低下によって身体機能の低下が起こります。

特に高齢者の場合は「フレイル」と呼び、筋力や活動量が低下した状態(=虚弱)のことを指します。

「フレイル」は致命的で、活動量低下に伴い、筋力の低下、認知機能の低下、精神活動の低下などを招くことで、要介護状態へのリスクを高めます。

これらは悪循環になるため、持病(基礎疾患)のコントロール、適度な運動、バランスの良い食事、感染症の予防が必要です。

日常生活において運動量を増やすアイディア

今は表立ってスポーツができない状況ですが、日常生活において体を動かす量を増やすことはできます。

例えば、買い物に行った時、出入口付近の車が”密集”したエリアに駐車するのではなく、わざと出入口から離れた場所に駐車し、歩く距離を伸ばすだけも効果があります。

(車じゃなくて、歩いていけよ!って話しですよね…)

店内の滞在時間を短くするために事前に購入リストを作成してから行くことが推奨されていますね。

その時にもっと滞在時間を短くするために、通常の1.5~2倍のスピードで早歩きしましょう!

そうすれば、ゆっくり歩くよりもカロリーを消費できる上に、疲れるので夜はぐっすり眠れるようになりますね!

もちろん電気で動くエレベーターやエスカレーターは使わずに、階段を使いましょう!

プラスαの工夫で運動量UP

ちょっとした工夫で簡単に運動量を増やすことができます。

例えば、

  • 歯磨きしている間につま先立ち
  • スマホは立って使う
  • 掃除機は腕を大きく動かす など

ちょっとした作業中、スキマ時間、通勤途中などに少しでも良いので体を動かす量を増やしましょう!

体を動かすことは筋力維持だけなく、ストレス発散やリラクゼーション効果があり、うつや不安な気分を改善してくれます。

あっ!外に出る時はマスクをしましょうね!

今が大切な2週間真っ只中です。

連休明けには少しずつでも経済・文化・日常生活が通常化しますように。

皆さん自粛しまくってたと思うので、これで突然フルパワーで動き始めると、ケガをしてしまうかもしれません。

なので、ちょっとぐらい体を動かしましょう。

そして、連休明けたら皆さんの運動アイディアを教えてください。


文責 西尾

お問合わせ|マスト整骨院・鍼灸院

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