【物理療法】当院の電気刺激機器の紹介【前編】 | 2020/08/24

物理療法についてシリーズで解説します。

今回は電気刺激療法についてです。

電気刺激療法にはたくさんの種類があるため、当院にある機器を中心について紹介します。

物理療法とは

身体に物理エネルギー(熱、電磁、音響、力学的)を加えることで、生体反応を引き起こし、血液循環の改善、筋の緊張や痛みを軽減する方法のことです。

電気刺激療法とは

主に体表面から神経や筋肉に電気刺激を与えることで、様々な生体反応を引き起こすことができます。

電気刺激の刺激強度を上げていくとピリピリとした感覚が起こり、このピリピリとした感覚が神経を通して脳へと伝わることで、感覚神経や脳が活性化します。

さらに刺激強度を上げていくと、運動神経を活性化し筋肉を動かすことができ、筋ポンプ作用で循環のを改善させることができます。

また、組織や細胞に作用することで生理活性物質(成長因子やサイトカインなど)を活性化させ、細胞増殖や分化・成熟を起こし、創傷の治癒を早めることができます。

電気刺激療法は、このような生体反応を利用することで、

  • 痛みの減弱
  • 筋力の維持・増進
  • 痙縮の減弱
  • 随意運動の促通
  • 運動機能の補填
  • 創傷治癒の促進

などの効果が期待できます。

ただし、目的とした効果を最大限に発揮するためには、刺激の部位・強度・周波数・パルス幅・波形・時間などを調節する必要があります

患者さんの中には、「強ければいいだろう」と限界まで我慢される方や、ピリピリした感覚が苦手で少し感じた程度で止めてしまう方など、目的とする刺激設定が達成できていない患者さんがいらっしゃいます。

そこで今回は私たち施術スタッフが何を狙ってやっているのか、目的を共有することで、施術の効果を少しでも高めることできればいいなと思っております。

経皮的電気神経刺激(TENS)

整骨院や病医院のリハビリなどで、よく「低周波治療器」と言った場合はこの機器のことです。

整骨院の療養費(保険)で電療料として加算されており、ほぼ全員が受けていると思います。

当院に設置しているのは「干渉電流型低周波治療器 セダン テミオス」と呼ばれる機器です。

電極は水に濡らしたスポンジを合わせたカップ状吸着電極です。

受けたことがある方は、「なんで濡れているんだ?」と疑問に思ったことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか?

実は皮膚は電気抵抗が強く、なかなか電気が流れません。

「劇場版 コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」をご覧になった方はご存知だと思いますが、藍沢先生が感電する事故のシーンがあります。

あの事故は水たまりに漏電しており、その水たまりを踏んでしまったがために人体に電気が流れて、心房細動を起こしてしまったと考えられます。

脱線したので話を戻しますが、水があれば少ない電圧で電気を流すことができます。

貼り付けるパッド型の電極の機器もありますが、あのパッドも水分の含有量が規定されており、経年劣化等で水分を失ってくると電気の流れが悪くなります。

そのため当院では使用回数や使用期限を記録し、定期的に取り替えております。

作用・効果

痛みの減弱

TENSの主な効果は痛み止めです。

体内の鎮痛メカニズム(ゲートコントロール理論、内因性オピオイドシステム、下行性疼痛抑制系)が活性化することで、痛みを軽減させることが期待できます。

特に侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛がある病態に効果的です。

鎮痛効果の高い刺激方法としては、疼痛部位と一致するデルマトーム(皮膚分節の神経支配)上で、110Hzの高周波数を耐えられる最大の強度でなるべく長く行うこととされています。

しかし、高強度で高周波数の刺激は筋収縮を起こし過ぎ、筋疲労に繋がりやすいため、低周波数(20Hz以下)と組み合わせたり、休息がリズムカルに入る設定になっています。

筋収縮による循環改善

TENSの副次効果として循環改善があります。

電気刺激によって筋肉が収縮すると、筋肉がポンプの働きをすることで、筋肉や周りの組織の古い血液を心臓に戻し、栄養豊富な血液を呼び込み、血液を入れ替えることができます。

また、硬く緊張した筋肉がほぐれるため、関節の可動域を拡げる効果も期待できます。

刺激部位は、対象とする筋肉を支配している神経の走行上や、モーターポイントと呼ばれる神経が筋肉に入っていく箇所をターゲットとします。

適応・禁忌

適応

疼痛のある症例はほぼ適応となりますが、特に急性痛に対して鎮痛効果が高いといわれており、慢性的な腰痛や頸部痛、肩こりなどにはあまり推奨されていないようです。

変形性関節症に対しては、関節周囲組織のスクレロトーム(骨膜分節の神経支配)やデルマトームを刺激することで高い鎮痛効果を発揮します。

他にも手術後の術創部の痛みや糖尿病性末梢性神経障害性疼痛、帯状疱疹後疼痛、骨転移性がん性疼痛、幻肢痛に有効という報告もあります。

禁忌

セダン テミオスは管理医療機器なので、取り扱い等をまとめた添付文書が存在します。

その添付文書によると、

 

と記載されており、問診等で確認を行いますが、該当される方はお申し出ください。

症例によっては電気刺激によって症状が悪化する可能性があるため、「痛い」「熱い」「かゆみ」などの痛み、灼熱感、不快感、疲労感が出た場合は、すぐにお申し出ください。

皮膚の状態によってはかぶれる可能性もあります。

また、あまり知られていないことですが、電極のスポンジにはバクテリアが存在するという報告があります。

当院では毎日洗浄していますが、電極を付けたい箇所に傷などある場合は感染症のリスクが高まります。

電極の装着に吸引機能を使用するため、吸引圧よって装着部が鬱血したり、水疱が発生するなど、吸引痕が残る可能性があります。

吸引痕は数分~数時間で消失することがほとんどですが、気になる方は遠慮なくお申し出ください。


長くなってしまったため、続きは次回!(^^;)

【参考文献】

  1. 吉田英樹(2020)Crosslink 理学療法学テキスト 物理療法、株式会社メジカルビュー社
  2. 日本理学療法士協会、解説付き英語論文サイト「経皮的電気神経刺激(TENS)の刺激パラメータと疼痛軽減効果との関係:人為的に発生させた圧痛に対するTENSの疼痛軽減効果(2020年8月24日閲覧)
  3. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構、「セダンテ ミオス」添付文書(2020年8月24日閲覧)
  4. 畑島紀昭「接骨院で使用する物理療法機器の衛生環境調査 : 電気療法機器の電極スポンジの衛生環境について」環太平洋大学研究紀要(11)、pp.187-190、2017

投稿日:2020年8月24日 投稿者:西尾

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