【物理療法】当院の電気刺激機器の紹介【後編】 | 2020/09/30

物理療法についてシリーズで解説しています。

前回に引き続き、電気刺激療法についてです。

電気刺激療法にはたくさんの種類があるため、当院にある機器を中心について紹介しています。

今回は「干渉波」と「微弱電流」と呼ばれる機器について紹介します。

干渉電流療法(IFCS)

当院でよく「立体」や「強めの電気」「干渉波」と表現されているもので、当院に設置しているのは「3D刺激装置 ES-525」と呼ばれる機器です。

この機器の凄いところは、異なる方向に3つの中周波を流し干渉させて立体的な刺激を可能にした「立体動態波®モード」と、マイクロカレント治療が立体的に行える、「3D MENS®モード」が搭載されていることです。

作用・効果

痛みの軽減・除去

IFCSの主な効果は、TENSと同じく痛み止めです。

TENSとの違いは電流の周波数が異なる点で、TENSは低周波領域が中心でしたが、IFCSは中周波領域を用いています。

TENSの弱点は皮膚の電気抵抗が大きいため電流を強くしなければならず、ピリピリとした感覚が発生してしまうことでした。

しかし、中周波は皮膚の電気抵抗がTENSより若干弱いため、ピリピリとした感覚が感じにくいのが特徴です。

また、IFCSでは2種類の中周波領域の電流をぶつけ合うことで合成波を発生させることで、深部の筋肉が大きく動いている感覚が得られます。

IFCSによる中周波領域の刺激は、ウェデンスキー効果という疼痛抑制効果が働き、神経ブロック効果(感覚神経に痛み刺激が伝わることを遮断する)が生じて痛みを軽減する特徴があります。

効果の持続性はTENSより劣ると言われていますが、IFCSの方が即効性が高いことが知られています。

筋収縮による循環改善

これもTENSと同様に、副次効果として循環改善があります。

電極の貼付する場所もTENSと同じようにデルマトーム(皮膚分節)を考慮して行うことで効果が期待できます。

IFCSの特徴である深部の筋収縮をより効果的に起こさせる方法として、電極のパッドを4つ用いて疼痛のある局所を取り囲むようにし、それぞれの導子が交差するように配置することが良いとされています。

その際は、患者さんが耐えられる最大強度で実施し、10分以上行うことが望ましいとされています。

また、IFCSは単独で行うより、IFCS後に手技療法や運動療法を行うことで施術効果を高めるとされています。

適応・禁忌

適応

IFCSの適応は、整形外科領域の関節や筋肉の慢性疼痛をはじめ、スポーツ傷害による明確な局所の急性疼痛や筋スパズムに効果が期待できます。

近年では運動器障害以外に、浮腫や腹部・胃腸障害、褥瘡などに対しても有効性があると報告されています。

禁忌

当院に設置してある3D刺激装置は管理医療機器に認定されており、薬機法に則り添付文書が存在します。

基本的にはTENSと同じ禁忌ですが、添付文書によると、

と記載されており、問診等で確認しますが、該当される方はお申し出ください。

また、3D刺激装置も吸引装置を用いるため、吸引圧よって装着部が鬱血するなど、吸引痕が残る可能性があります。

気になる方は、遠慮なくお申し出ください。

微弱電流刺激療法(MES)

当院で施術中に何も感じない電極パッドを貼られたことがある方がいると思います。

なんだコレ?とお思いになったかと思いますが、「微弱電流」や「マイクロカレント(MCR)」と呼ばれる機器です。

当院に設置してあるのは「AT mini」と呼ばれる機器です。

この機器は、1mA以下の非常に弱い電流を利用し、細胞レベルで組織の修復を促進させることが期待できます。

また、先ほど紹介した3D刺激装置ES-525の3D MENS®モードもMESを用いています。

作用・効果

創傷治癒の促進

生体内には微弱な電流が流れており、生体電流と呼ばれます。

しかし、ケガなどで生体電流の流れが電位が乱れ、正常な働きを失ったときに損傷電流に変わり、正常な働きを失います。

MESは生体電流や損傷電流を増幅・補完することで電位の乱れを修復し、生体の自然治癒力を引き出すことができます。

局所への通電によって、細胞のサイトカインの分泌を促進し、様々な生理活性物質を活性化することができます。

スポーツなどによる急性外傷や疲労に対しても、除痛効果と組織損傷の治癒が期待でき、多くのトップアスリートも練習・試合後のコンディショニングに用いています。

また、修復促進の特性を活かして、エステ関係でも使われたりもしているようです。

通常、電極には+極(陽極)と-極(陰極)があり、この間を電気が流れます。

電極には、

陽極:-イオンを引きつける。

血管収縮、神経興奮性を抑制させる。

陽極側へ遊走した免疫細胞により壊死組織が貪食される。

陰極:+イオンを放出する。

血管拡張、神経興奮性を増加させる。

陰極側へ遊走した修復の機能をもつ細胞により、キズを縮小させる。

という特性があり、うまく電位を誘導してあげることで効果を発揮します。

これはMESに限った話ではなく、TENSやIFCS、鍼通電療法でも同様の特性を利用した施術を行う場合もあります。

適応・禁忌

適応

MESの適応については炎症の増悪、創傷の浮腫の程度、肉芽の色調、全身状態によって変わります。

発赤や腫脹、熱感などネガティブな変化が生じた際は、使用を中止します。

また、MESは非常に微弱な刺激なため、刺激したい部位の電気抵抗が大きいと効果が期待できません。

禁忌

基本的にはTENSやIFCSと同じです。


以上が当院に設置しているIFCSやMESの電気刺激機器です。

もう一つ、当院には「JOYトレ(別名:BURN Core)」という機器があり、EMS(Electrical Muscle Stimulation:電気筋肉刺激」と呼ばれたりもします。

TENSやIFCSなどは管理医療機器の認証を受けており、どんな周波数を用いていても低周波治療器として登録され、使用目的が疼痛緩和で、保険適用となります。

しかし、同じような機能を持ちながら医療機器の認証を受けていない電気機器もあり、それが「JOYトレ(別名:BURN Core)」です。

添付文書等が発見できなかったため原理等が分かりませんでしたが、筋力増強を狙う電気刺激機器としてリハビリテーション領域で用いられているものでNMES(神経筋電気刺激)と呼ばれる類のものがあります。

NMESは筋力低下、痙縮、末梢神経麻痺、中枢性運動麻痺などの改善のために用いられています。

NMESを行うことで随意運動の促進、痙縮の減弱、筋萎縮の予防・改善、筋力増強、循環改善が期待できます。

おそらくJOYトレもNMESに近い作用機序なのではないかと推測します。

WEB上の販売店の情報によれば最大12,500Hzの高周波領域の周波数を用いているようです。

しかし、薬機法によれば構造・原理・目的等から判断して医療機器に該当する製品については、効能効果等について広告することが禁止されていますので、JOYトレに関してはこれ以上のことが書けませんので、ご承知おきください。


今回、物理療法の中でも電気刺激機器についてまとめてみました。

電気刺激が生体に与える効果については未解明な部分も多く、製造元も機器の種類も山のようにあり、科学的にどうなのだろうと思うような商品も存在しました。

低周波治療器は家庭向けにも多く製造・販売されているため、業者の戦略に乗せられぬよう、ヘルスリテラシーを高めておくことが必要だと感じました。

施術を受けられる皆様にとって、少しでも有益な情報を提供でき、施術効果をより高めることができれば幸いです。


【参考文献】

  1. 吉田英樹(2020)Crosslink 理学療法学テキスト 物理療法、株式会社メジカルビュー社
  2. 「3D刺激装置 ES-525」添付文書
  3. 「AT mini」添付文書

投稿日:2020年9月30日 投稿者:西尾

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